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毛沢東『遊撃戦論』の英語版及び要旨・分析

 

 

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上記が毛沢東『遊撃戦論』英語版です。

簡単な解説も載せておきます。

 

はじめに

 

 毛沢東の遊撃戦論は大きな影響を革命戦争に対して与えていたと言われている。遊撃戦論自体は独自のドクトリン及び孫子等の以前の兵法書を受け継いだと思われる内容となっている。また、クラウゼヴィッツ戦争論の内容とも重なる点があり、理論的な側面からみれば革命戦争において最も優れた内容と言ってもよいだろう

 しかしながら、毛沢東理論をそのまま適用して成功したケースは中国ぐらいである。なぜ、中国では成功したかについては、中国の独自性、例えば、人口や地形、外交的関係等があげられる。戦略論や地政学的な側面からアプローチするのは毛沢東の遊撃戦論自体が抽象的で理論を説いたものであり、それを異なる視点やより深い視点から考察することでこの理論は普遍的なものか、それとも、中国であったから成功したということを明らかにすることが本論文の目的である。

 

毛沢東の『遊撃戦論』の要旨

 

 遊撃戦論は革命戦争を成功させるための理論を書かれたが、ゲリラ戦に比重を置いているところが革新的な点である。政治から戦術まで書かれているものの、政治及び戦略的な側面を取り上げる。戦争の本質は通常の戦争も革命戦争も同じであるが、具体的な戦術や特徴は異なってくる。

 また、通常戦とゲリラ戦の協同が革命戦争の特徴としており、正規戦を補佐し、二次的な役割を果たすものとしている。ゲリラ戦の特徴としては決戦がないという面がある。クラウゼヴィッツ戦争論の説くように政治の軍事に対する優越の重要性を指摘している。人民からの支援に関しては、共感を得るものでなければならない。ゲリラ戦の歴史は古く、一例として、ナポレオンのロシア侵攻の際のゲリラ戦があげられる。ゲリラ戦の具体的な役割分担としては、プロパガンダゲリラ活動、戦闘部隊に分けられる。抗日戦争での勝利を目的に書かれているが、その中で、日本の戦略を速戦即決で、日本の後方地域の安全が重要であるという認識がある。ゲリラの組織的な側面においては、構成要素や組織の設立課程について記述されている。ゲリラ戦における政治的な問題において、政治目標も持つべきことがあげられている。軍事作戦については指揮権の下に行動を起こすべきであるということや軍規について触れられている。

 ゲリラ戦略の章においてはゲリラの3つの役割として外線作戦を行う、基地を作る、戦争地帯を拡大させるというものがある。また、犠牲については自己保存のために必要であると述べている。重要な要素として次の6点をあげている。敵の防衛線が伸び切ったといに攻撃し、敵の士気をくじくこと、敵に包囲された場合には撤退すること、自然条件は制約的なものであること、物資供給の入手可能性は行動を制限するということ、ゲリラは広い地帯での行動をするために散兵することがあげられている。

 他にも、敵を欺くことや敵の弱点をつく等があげられている。以下、具体的な戦術についても概要を示したい。ゲリラは警戒、移動性、攻撃に基づくものである。戦術は硬直した攻撃を避け、撤退し、素早い意思決定を決断するものとしている。内乱と全面戦争の区別はあるものの、同様の軍事的方法をとる。環境や政治、経済の発達が新しい法則を生み出すとしている。ゲリラ戦においては陣地に関して根本的に正規戦と異なり、地域の状況に大きく依存するものである。また、リーダーシップの有り方もゲリラ戦では異なり、一般的な認識と異なり、高度の連携が必要である。そして、ゲリラと正規部隊を混同してはならないとしている。ゲリラの攻撃方法としては、集中に関して敵が防御的であるときに望ましく、時機を見て、攻撃すべきすべきである。3つの共同、すなわち、欺瞞・誘惑・敵を混乱させるべきであるとしている。

 

第2章『遊撃戦論』の分析

 

 『遊撃戦論』の一般的に正しいと言えない特殊な側面を考察する。普遍的な側面については、それ以外理論や歴史に照らして概ね当てはまると思われるので 割愛したい。

  特殊な側面としては、中国の特殊事情としては次の3点が大きいと思われる。第1点目に、広大な領土である。これによって、『遊撃戦論』の理論を極めて効果的に使うことができたが、逆に言えば、広大な領土がなければならないということになる。第2点目に、中国の人口が極めて多いということであろう。第3点目に、後述するアフガニスタン戦争で見るように、ベトナム戦争でも同様であったが、統一的な指揮系統に基づく従来型の軍隊の組織の指揮系統をさらに強化したものではなく、分散型の組織であったことから指揮系統の集中は必ずしも正しいとは言えない。

 具体的には、アフガニスタン戦争でゲリラ側が大敗し一番 死傷者を出した戦いはソ連と通常戦を行ったときである。分散型のゲリラは広大な領土では充分活かせるものの、狭い領土の場合には各個撃破される危険性が高いといえる。

 

                                     以上

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