国際経営戦略研究所公式ブログ

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企業価値算定手続きについて

1用語整理

  • フリー・キャッシュ・フロー(FCF)=企業の営業・投資活動が生み出した税引き後のキャッシュフローである。したがって、FCFは企業の財務活動や資本の調達方法には影響を受けない。
  • DCF法=ディスカウント・キャッシュフロー法(今回利用する手法)
  • EBITA=支払利息・のれんの償却費等営業外損益前利益
  • NOPLAT=EBITA-税金
  • FCF=NOPLAT-純投資額=(NOPLAT+減価償却費)-総投資額
  • バリュー・ドライバー=どのような要因により企業の価値が影響を受けているか?
  • 具体的に言えば・・・売上・利益・投下資産額等にかかる成長率と事業に投下した資産がどの程度の収益率を上げるかという2要素がある。
  • ROIC=後者(投下した資産がどの程度収益率をあげるか)
  • ROIC=NOPLAT/投下資産

2そもそも企業価値とは何か

  • 経営や財務の用語としての企業価値は、株主にとっての投資価値の話であってそれ以外の利害関係者にとっての利用価値の話ではない」
  • しかし、上場企業ではない、中小企業のM&A市場の場合は、類似企業を比較するものやDCF法が代表的である。
  • 世界的な投資家である、ウォーレン・バフェット氏も「企業が生み出すキャッシュ・フロー」が企業価値であると指摘している。

3事例研究

  • 被買収企業は主たる事業は情報通信業に当たる。従たる事業として各種イベント等の事業も行っている。
  • 収益のほとんどが情報通信業によるものであるため、情報通信業の分析を行い、情報通信事業を主たる評価対象にする。
  • サーバー構築や監視、保守・点検や媒体の運営等による手数料が収益源である。
  • 被買収企業は、新型コロナウイルス感染症のため、広告費等の削減や費用の増大等から経営状況はさらに悪化すると判断した。
  • 現在、債務超過に陥っているが、経費削減により収益化は十分可能

 

企業価値はいくらか

 

前提:売上1,300,000円で経費650,000円

 

利益は・・・

1,300,000-650,00

0=650,000円

となる。

3年分のFCFは、650,000×3=1,950,000円

 

  • 3年分のFCFである1,950,000円を割引率で割ると、現在価値が算出できる。
  • 割引率が6%で3年分を割り戻すと・・・

現在価値は、3年間のFCF額で計算すると次のようになる※

 

  • 1/(1+r)+1/(1+r)^2+1/(1+r)^3・・・という式を用いる。
  • 3年分の割引率の計算である。また、r=6%と仮定した。
  • 具体的に計算すると・・・
  • 1/1+0.06≒0.94である。よって、
  • 0.94×650,000≒611,000円程度
  • 1/(1+0.06)×(1+0.06)≒0.89である。よって、0.89×650,000=578,500円程度
  • 1 /(1+0.06)×(1+0.06)×(1+0.06)≒0.84

よって、0.84×650,000=546,000円程度
したがって、
611,000+578,500+546,000=1,735,500円という計算になる。

 

5補足

 

  • 割引率は一般的なM&Aで用いられる割引率である6%を用いた。
  • 事業価値がFCFの3年分とする根拠は、中小零細企業M&Aにおいて最も一般的な数値であるためである。