国際経営戦略研究所公式ブログ

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ビジネス・デューデリジェンス

目次
はじめに
第1章 BDD(ビジネス・デューディリジェンス)につ
いて
第2章 マクロ環境分析
第3章 競合構造分析
第4章 事業構造分析
第5章 シナジー効果
第6章 アクションプラン策定
おわりに
資料
参考文献
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はじめに
デューディリジェンスとは何かを示したうえで、今回の報告書で実施するビ
ジネス・デューディリジェンス(以下、「BDD」という。)の位置づけを示し
たい。
まず、デューディリジェンス(以下、「DD」という。)とは、「正当な注
意」といった意味であるが、M&Aにおいては「精査」といった意味である。
買い手にとってのDDの必要性とは、M&Aが企業戦略上の必要であるかを
見極めることである。また、DDの必要性に売り手と買い手の「情報の非対称
性」の解消もあげられる。
なお、M&Aにおいては、「顧客、技術、組織、を一から作り上げる時間を
買うこと」であるが、リスクも存在する。
次に、DDの種類を示す。
①BDD(対象会社の事業の将来性を見極めるためのビジネスDD)
⇒本報告書はこれにあたる。
②財務DD
③法務DD
④人事DD
⑤環境DD
⑥不動産DD
⑦ITDD
等があげられる。

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第1章 BDD(ビジネス・デューディリジェンス)につ
いて
ビジネスDDでは、一般的に次の5項目(様々な項目があるが、代表的なも
の)があげられる。
表1
項目 内容
①マクロ環境
分析
・対象会社が重視している政治・経済・社会等の指標
等の分析
②競合構造分

・競合他社や代替品の状況、顧客との力関係などを
分析
③事業構造分

・競争力の源泉となっていると考えらえる項目を分

④スタンド・ア
ーロン分析
・親会社等に依存している機能を把握し、M&A
の追加コスト等の可能性を分析
⑤事業計画分

・事業計画の前提条件を把握し、上記の状況や経営
資源の制約等との整合性を分析
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A社とB社とのM&A(以下、「当該M&A
という。)においては、親会社等は存在しないため、スタンド・アーロン分析
を除く、①~③及び⑤の項目を対象にする。
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第2章 マクロ環境分析
マクロ環境分析においては、「PEST分析1」を行う。
最初に、P(Politics:政治的要因)について示したい。
政治的要因とは、法律、条令、規制等の行政レベルでの問題のことである。

表2(特に、IT分野に特に関連のある要素)

法令/規
制等
情報通信産業においては、DX等の推進をはじめとし
て、全面的な後押し
税制 法人税の引下げ
政治動向 菅政権によるデジタル庁設置(予定)
政治の潮

新自由主義的で規制緩和の傾向
補助・交
付金・特
区制度
中小企業等向けに、事業承継補助金経営資源引継ぎ補
助金、IT導入補助金、小規模事業者持続化補助金等にお
いてIT化の推進


1 「政治」、「経済」、「社会」、「技術」の頭文字の4分野からマクロ環境をみるフレームワ
ークである。
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2番目にE(経済的要因:Economy)について示したい。
表3

景気動向 新型コロナウイルス感染症(以下、「同感染症」という。)
による大幅な景気悪化から、大幅な反発を見せるも再度
感染症の流行により、景気の悪化
賃金動向 最低賃金は上昇傾向。ボーナス等は減少。
物価・消

・物価はほぼ横ばい(1%前後の上昇)
・消費は同感染症により冷え込んだものの、巣ごもり消
費により、情報通信分野においては消費増の傾向も
金利 超低金利。国の財政状況(国債等の利払い等)を考慮す
ると、金利の大幅な上昇は当面の間は想定しづらい
株価 日経平均株価はほぼ30年ぶりの高値。一方で、TOPIX
の上昇は鈍く、NT倍率(日経平均株価及びTOPIXの比
率)を見ると明らかである。
3番目にS(経済的要因:Society)について示したい。
表4

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人口動態 超少子高齢社会
社会インフ

5Gの整備、SNS等の浸透(特に、若年層)
ライフスタ
イル
趣味嗜好の多様化により、SNSや動画サイト等の需要
の拡大
流行 インターネット発祥の言葉が流行語になることも多い
世帯 単身世帯の増加
未婚・既婚 未婚者の増加
なお、資料1及び2は、SNSに関する意識調査として重要なものであるた
め、参照してほしい。
4番目に T(技術的要因:Technology)について示したい。
表5
ビッグデー

様々な対象が分析可能になり、予測やマーケティング
での利用も
IOT等 モノのインターネット化により、さらに、情報社会が進

研究開発 官民一体となり、情報技術の開発が進んでいるが、日
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本は米国よりも遅れがち
運用・保守
管理技術
GAFAM等のサービスにより様々な主体がITの活用
が以前よりも、安く、早く、容易に媒体の運用できるよ
うになった。
スマートフ
ォン等
多くの人がスマートフォンを持つようになり、好むと
好まざるに関わらず生活様式、ビジネス等が変化
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第3章 競合構造分析
競合構造分析として一般的な分析手法である「ファイブ・フォース分析2」を
行う。
表6
(情報通信・SNS等の分野におけるファイブ・フォース分析)
①買い手の交渉

サービス利用者は品質及び料金により選択を行
う。
②売り手の交渉

サーバー(クラウド)運用に関する高度な技術やそ
れを運用できるIT技術者の人件費が高騰してい
る。
③業界内の競争 大小様々な事業者が存在し、増加傾向にある。
④代替品の脅威 無料のサービスをはじめとした異なるビジネスモ
デルの事業者も存在している。
⑤新規参入の脅

新規参入は極めて多い。
2 マイケル・ポーターのファイブ・フォース分析では、①買い手の交渉力②売り手の交渉
力③業界内の競争④新規参入者の脅威⑤代替品の脅威に分けて分析するフレームワーク
ある。
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第2章ではマクロ環境分析を実施したが、情報革命により競争が大きく変容
した。これには、以下の3点が競争において重大な影響を及ぼしている。
①情報革命により業界構造・競合のルールが変化する。
②情報革命により、競合他社を追い越すための新たな手段を提供し、競争優位
が生まれる。
③情報革命により新しいビジネスが生み出されるが、既存業務の中から生まれ
ることが多い。


バリューチェーン3において、ITの役割が飛躍的に増加した。企業が想像す
る価値は、買い手が製品やサービスに支払おうとする金額により測定できる
が、企業が想像する価値が価値活動を実施するコストを上回れば、企業は利益
を得る。
では、ITにより、具体的にどのような変化がきるのかは次の通りである。
(1)コストダウン
(2)差別化の強化
(3)競争範囲の変化
である。それぞれについて示したい。
(1)コストダウン
AIをはじめとして自動化されることにより、トータルコストが低減してい
る。特に、AmazonGoogleMicrosoft 等のクラウドサーバーにより、物理的
3 バリューチェーンとは、企業が行う活動を、技術的あるいは経済的な特徴によって分類
したものである。バリューチェーンにおける各活動は「価値活動」という。
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なサーバーを保有せずとも、インターネット上で媒体の運営が可能になった。
これにより、物理的サーバーを立てずとも安価にサーバーを利用できるた
め、小企業も活動できるようになった。
(2)差別化の強化
対応に必要とする時間やシステムの導は自社サービスを競合製品と差別化す
るうえで効果的な方法になっている。
AIをはじめとした、人の目を補完するシステムが重要になると思われる。


(3)競争範囲の変化
対象とする地域は全国や、理論上は地球規模になる。
とはいえ、現状を踏まえると、(言語上の問題から)日本国内に限定される
と思われる。